アリスフェスティバル2005参加作品。

自虐的ナンセンスコメディ

をキャッチに掲げる仏団観音びらきの観劇は今回で二度目。

前作、「女囚さちこ」に引き続き、またしても悲惨な公演タイトルだ。

女殺駄目男地獄」(おんなごろしだめんずじごく


倉田真由美の「だめんずうぉーかー」で認知度を上げた

「だめんず」と、彼らにハマる女達の痛々しい恋愛模様。


さわやかな午前3時に放映されているダメ恋愛検証番組「目覚めよ!」
にて紹介される「だめんず」に引っ掛かった三人の女たちの過酷な顛末。


本気になった男に金をせびられ、暴力をふるわれ、浮気を繰り返されても

「きっと、彼は目を覚ましてくれる」といわんばかりに、すがりついたり


自宅に転がり込んできたマザコン男と非常識な母親の行動に耐えられず

出て行ってほしいと訴えるが、逆ギレした男と母親に殺されてしまったり


婚約者がいるにも関わらず口説き上手の宇宙人にハマって婚約を破棄してしまったりと


とにかく救いようのない女たちの物語が、ド派手な演出で繰り広げられる。

ガンガン流れる有名歌謡曲に、これでもかと盛り込まれるダンスシーン。

大阪出身劇団(仏団?)ならではのベタな笑いがあちこちに散りばめられ

「もうこりゃ笑うしかねえだろ!」と腹を抱えてしまうわけである。


しかし、最後にダメ恋愛をたしなめていた番組司会の二人も

じつはダメ男にハマっているというラストを用意しておくことで

しっかり観客に対する警告と引っ掛かりは残していたりするのだ。

あえて一つこの作品の改善点を掲げるとすれば劇中で描かれている

「だめんず」以外の男たちも、ほぼ「だめんず」だったということだ。

エリートでも、結局は計算高い女に丸め込まれてしまったり金にうるさかったり。

一人、女性が理想とするものをすべて持ち合わせている

優しい男性に愛される女を引き合いに出して、けれど結局は

「だめんず」に走ってしまう女性の卑屈さが描かれている場面があったら、

もっとダメ人間の悲哀がただよう舞台となったのではないだろうか。

しかし、この劇団。扱っているテーマはどぎついものであっても、

わりと正統派エンタテイメントの構造をなしている、とおもう。


演出だけではなくて、役者の演技もド派手なのだけれど

みていて、うるさくないのは力の入れどころと抜きどころを

自由自在にあやつっているからなのだろう。

特に主宰の本木香吏氏の演技は見ものだ。

表情、声、全身をフルにいかした魅せ方を知っている。
だから、自分が一番ブスに見える演技が出来るのだ。

今、世間で話題になっているコーチングのプロの方がこうおっしゃっていた。

『プロとは、「恥も外聞もなく、自分をさらけ出しながら
自分と向かい合う勇気と、英知を持った人のこと
」だとおもう。

ここでいう「勇気」は、怖くてもチャレンジし続けられる気持ち。
ここでいう「英知」は、真実や真理をとらえることのできる深いの認識力。

次が創れないなら、プロを降りている。
真実や真理を探究しようとしなかったら、プロではない。

どんなプロの人の言葉も、突き詰めると、そこに行き着いているような気が
するのは、私だけでしょうか?』

わたしはこの言葉が主宰・本木香吏氏の姿勢に

ぴったりと合わさっているように思うのだ。

彼女は「世間の煩悩」や「女性の醜さ」と向き合い

一方的な女性側からの訴えに留まらず、それ自体を

笑いとして昇華させているのだから。


そのプロ意識でこれからも仏団菌を撒き散らしていってほしい。

次回公演もたのしみだ。