小指値 第3回本公演

「俺は人間」11/15(火)~11/20(日)

劇場:タイニイアリス


◎「あたしのことすなおじゃないとか言う人いるけど あんたのまえで すなおになれないだけよ。」


タイニイアリスHPでの公演紹介文に興味をひかれたので
劇団のHPをのぞいてみた。

http://www.koyubichi.com/


2004年、多摩美術大学にて結成された若手の劇団である。

作品制作過程では、劇団員それぞれが小説・詩・写真・創作ダンスといった

作品を持ち寄り、演出の北川陽子が脚本に仕上げるのだという。


なるほど、それらの作品が集結した舞台は、

どのような形で目の前に現れてくるのだろうと興味が湧いた。

・・・・そこには、私には一様に好きだとか、嫌いだとか言えない不可思議な世界があった。


というのも、脚本が断定的かつ説明的な台詞の羅列で構成されており
言いたいことを全て、登場人物に口にさせてしまっていて、それだけを

取り上げてみれば、決して出来が良いとは言い難いのだが、


なんとなく、引っ掛かる、のである。


それは、おそらく必要以上に過剰に反応し、常に動き回っている

役者陣の身体から真実性が見え隠れするからではないだろうか、と思う。


装置は、赤・緑・黄といった配色で染められているので一瞬、わからないが

『耳をすませば』の月島雫と天沢聖司の顔がデカデカと舞台後方に吊り下げられている。

しかも目や口の部分に、さらに月島雫や天沢聖司の顔が貼り付けられている。

あとは特に何も置かれていない。


パンフレットから、あらすじを引用しておく。

「西暦2080年、若者は渋谷に集まり、恋心を演じる完璧な遊びに興じた。

なぜその遊びをしなければならないのか、誰にもわからない。ひたすらに

続ける手段がある限り、彼らはその遊びを続けている」


全編を通して表されていく、誇張表現。

幾度となく「ああ、そういう気持ち、分かる」と同調する。


仲の良い女の子同士がお互いに

「かわいいね」「そんなことないよ」

と目をひんむいて絶叫している。


友人の思い人に告白され「どうしても駄目か」と迫られ、

顔が強張り、つま先がピンと立ったまま、動けなくなってしまう。


人が大事な告白をしているときに、

上着を脱がせ乳首を眺めたり髪の毛を鼻毛にしたりする。


会話の裏にある、嫉妬や、不安や、恐怖や、嘲笑。

といったものが、ありとあらゆる形で具体的に身体化されているのだ。


少々、扱っている空間が広く、しかも1シーンごとに登場している人物が少ないので

焦点が散漫になってしまい、迫力に欠けていた面があったのは事実、である。

けれど結局、最後まで、飽きることなく舞台を眺めてしまった、ということで、自分でも

「あれは一体、何だったんだろう」と、もやもやした気持ちを抱えたまま、なのである。


「ヤング・マーブル・ジャイアンツ」にも出演していた

ロボット役の天野史郎さんは思わず人目を引いてしまうほどの、ラインの細さ。

大きい目に存在感があり、彼が舞台に出てくると、空気が変わる。他の役者さんも、

ものすごい形相で舞台に臨んでいるが、女の子も可愛い子が集まっているように思う。


だからこそ、なんだか気になって、気になって、仕方ない、この、恋心のような、感覚。